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アサド政権崩壊後のシリアと北東部の状況について
シリアではアサド政権が崩壊して1月8日で一ヶ月となりました。50年以上続いた独裁政権が崩壊した12月8日、イラク北部アルビルでも反体制派の旗を掲げた車やバイクと共に独裁からの解放に喜ぶシリア人を多く見かけました。
シリア当局からの監視や徴兵逃れによる逮捕など、これまで抱いていた恐怖から解放され、和平への道筋に希望を見出す人たちの声が溢れていました。
一ヶ月が経過した今、シリア国内では旧反体制派のHTS(シャーム解放機構)率いる暫定政府が政権運営を担っています。
外交面では、HTSの指導者シャルア氏を中心に外交を活発化させ、対シリア制裁の解除に向けて動き出しており、外相や保健大臣も関係各国との会談を重ね、物資や技術支援への協力要請を行っています。一方、内政面においては、国内多数派のイスラム教スンニ派のみならず、国内の多様な民族、宗教・宗派との融和を目指し、民主主義的な体制構築を訴えていますが、道筋は不透明なままです。
暫定政府の任期である2025年3月までの間に、国民対話会議が開催予定でしたが、延期が決定され、新体制への移行にも遅れが出る可能性が高まっています。また、その遅れと共に、シャルア氏に権力が集中し、「新たな独裁者」を生み出さないことが重要だという指摘も相次いでいます。
喜びの声で溢れていたシリア人の声は、一ヶ月前と比べて少しずつトーンが下がり始めています。
南部や首都の一部へのイスラエルからの空爆や侵攻、東部での過激派組織IS「イスラム国」の勢力再拡大の動き、北部や北東部おけるトルコ軍及びトルコの支援を受けるシリア国民軍(SNA)とアメリカが支援するクルド人勢力組織シリア民主軍(SDF)の激しい衝突など、情勢は総じて悪化していると報告を受けています。
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JIM-NETが支援を続けるクルド人が住む北東部は現在、特に情勢が悪く、最近の激しい戦闘で橋や道路が閉鎖されるなど、人や物資の動きが制限されています。12月8日以降、ダマスカスやアレッポなどシリア全土からクルド人に対する迫害や弾圧を不安視する12万人を超える人々が北東部へ避難しています。同地域では、2011年から続くシリアの混乱の中で、トルコからの越境攻撃や侵攻、2023年2月に発生した大地震や2024年10月のイスラエルによるレバノン攻撃によって多くの人々が避難しており、これまでにない極めて厳しい状況が続いています。
提携団体であるクルド赤新月社(KRC)では、保健セクター、水や衛生セクターとも協力して、これらの緊急支援に取り組んでいますが、人の往来が激しく、現地団体でさえも、対象人数の把握が困難な状況です。
避難してきた人々は学校やモスクなどで寝泊まりしており、地域住人は、避難民を自宅に迎え入れるなどしています。緊急措置として、市営スタジアムにテントを設置して人々を受け入れていますが、毛布や暖房器具や燃料などが不足しており、人々は寒さと不安の中で過ごしています。自治政府は、ラッカ周辺に国内避難民キャンプを新たに開設する予定ですが、混乱の中、キャンプ新設には至っていません。
シリア支援を担当するJIM-NETスタッフのリームは「この13年もの間、この地域は常に不安と恐怖に脅かされつつ、多くの国内避難民を受け入れてきました。その中でも今が一番厳しい状況であることは明白です。朝晩は0℃近くまで気温が下がる地域です。寒さ、医薬品不足、とにかく心配です」と話しています。
刻々と状況が変化する中で、JIM-NETができることを引き続き模索していきます。
タグ: シリア国内支援