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パレスチナ情勢と公平なる平和への取り組みについて

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 10月7日に始まったイスラエルとパレスチナ・ガザ地区の軍事衝突により10月22日現在、イスラエルとパレスチナ合わせて6,000人以上が亡くなりました。激しい空爆の続くガザ地区では4,600人を超える人々が亡くなったとガザ地区保健当局から伝えられています。イスラエル側は更なる攻撃の強化を明言しており、ガザ地区への地上侵攻の可能性が高まっています。
 また、10月17日にはガザ地区のアル・アハリ病院で大規模な爆破事件が発生し、多くの市民が犠牲になりました。人々の生命を守るはずの病院が爆破されれば、救える命が救えなくなります。外傷の治療はもちろんのこと、「がんの子どもたちの治療はどうなってしまうのだろうか」と、支援地域は異なるものの、戦地における小児がん治療の難しさも見てきた私たちスタッフは大きな心配に包まれています。

 ガザ地区への激しい空爆を受けて、イラクの首都バグダードではガザへの連帯を示す大規模なデモが起こりました。また、JIM-NETの支援先でもあるバグダード中央小児教育病院からも病院スタッフや患者が「Free Palestine」「Pray for GAZA」と書かれた紙を掲げ、パレスチナへの連帯を示す写真が多数送られてきました。これはJIM-NETバグダード事務所のスタッフであるパレスチナ人のアブサイードが呼びかけたものでした。
 来日経験もあるアブサイードは、ハイファ出身のパレスチナ人の両親を持ち、イラクで生まれました。父親は1948年にハイファがイスラエルに攻め込まれた際、戦闘に参加し、母親はトラックに乗せられヨルダンからイラク南部のバスラに逃れました。その後、バグダードで再会した両親の間にアブサイードが生まれました。かつてパレスチナ抵抗運動にも参加したことがあるアブサイードは、イラク戦争後のパレスチナ人への迫害が激しい中、イラクに残り、JIM-NETのスタッフとなったのです。

 今回のガザ地区への空爆に対し、アブサイードはこのように話してくれました。
「イスラエルはハマスを攻撃するという口実で、ガザ地区への無差別な攻撃を続けています。学校や病院、パン屋、モスクなどに対して使用が禁じられている白リン弾が使われています。まず、我々は理性的な言葉を持って、無謀な戦いは止めるべきだ。この地では、以前から占領や人々の殺害、インフラの破壊が行われています。本当に心が痛みます。また、ガザだけでなく、パレスチナ人が住むヨルダン川西岸地区でもイスラエルの軍事攻撃で市民が亡くなっています。彼らは武器など持っていません。国際社会は、パレスチナ人に対する人権や保護を与え、今すぐ空爆や犯罪を止めてほしい。パレスチナの人々にまともな生活、安定、主権国家を与えてほしいと願っています。そしてパレスチナ人とユダヤ人がともに安全に暮らす権利を与えるべきだと思っています」

 またイラク人の中には、このようにガザ地区の映像や病院の爆破のニュースなど触れないようにメディアから距離を置いている人もいます。
「イラクはパレスチナと背景は異なるけれど、常に戦場や爆撃が身近にあります。私たちの頭と心には常にその映像が残っていて、戦場の様子を見ると当時の記憶が思い出されてつらくなってしまうんです。だからテレビもSNSも最新ニュースをブロックするようにしてるんです。ガザの様子をニュースを見たとき、それはまるで数年前のモスルの町のようでした。あんな悍ましい光景、二度と見たくないんです」

 イラクでは、イラク戦争によって医療が崩壊していたところに過激派組織IS(イスラム国)が台頭しました。病院の破壊や乗っ取りなどで医師たちへの迫害も激しくなり、医師が治療を行えなくなる事態にも直面しました。2017年7月、イラク北部のモスルは、イラク国軍とIS(イスラム国)が激しい戦いの末、ISの支配から解放されました。しかし、IS(イスラム国)が敗走の際に火を放ったため、JIM-NETが支援を続けているイブン・アル=アシール病院は無残に焼け焦げ、扉には撃ち込まれた銃弾の跡が刻まれました。大量の薬品が黒焦げになっていた様子は忘れられません。
 今回、パレスチナ、ガザ地区のアル・アハリ病院の爆破された惨状を報道で目にした瞬間、JIM-NET東京事務所でもイブン・アル=アシール病院のこと、イラクが経験してきた数々の苦難を改めて振り返りました。おそらく、今回の報道で心を痛めたりPTSDに悩むイラクの人々もたくさん存在していることでしょう。
 JIM-NETはパレスチナに対する支援を実施している団体ではありませんが、パレスチナ人のスタッフがいることや、同じ中東地域で事業を実施していることから、日々流れてくるパレスチナのニュースに憤り、悲しみ、共感する部分を持ち合わせながらこの事態に接しています。

 パレスチナ・ガザ地区の軍事衝突の様子が刻一刻と変化するなか、東京事務所所では、Coffee for Peace!に続き、この11月から始まるチョコ募金の準備に追われております。アル・アハリ病院の爆破報道以来、チョコの準備に関わって下さった方々の紹介やチョコ缶の絵を描いてくれた子どもたちのことをSNS等で発信することができずにおりました。絶望や悲しみ、噴りに押し流されそうですが、戦争と紛争の犠牲になったイラクとシリアの子どもたちへの支援活動を続けるためにも、これまで以上に心を込めて準備作業に取り組むことを互いに確認いたしました。

 この数年、JIM-NETが発信している「JUSTPEACE(公正な平和)」。他者・他国の人たちの困難を見過ごしてまたその犠牲によって成り立っている平和や安定は、ジャストピースと言いません。JIM-NETは、何処の地域・国であっても、すべての人が等しく幸せに暮らすことができる権利、平和の内に生きることができる権利の実現を願い、一人でも多くの方々にも「JUSTPEACE」を伝られるように活動を続けますので、引き続き今後ともご支援をお願い申し上げます。

※JIM-NETの親団体ともいえる 日本国際ボランティアセンター(JVC)では、
30年に渡ってパレスチナ支援を行ってきました。
(JIM-NETはJVCより派生した団体です。)

JVCではガザへの緊急支援を呼びかけています。
現地の情報を随時更新しておりますので、ぜひJVCのWEBサイトもご覧ください。
https://www.ngo-jvc.net/activity/report/20231007_gaza.html

アブサイード(JIM-NETバグダード事務所)


バグダード中央小児教育病院のスタッフ


バグダード中央小児教育病院のスタッフ

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