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シリア南部から逃れて来たシャーム
「2011年3月、私たちの住んでいるダラアの町からシリアの崩壊が始まりました」
極端に物が少なく、がらんとした家にJIM-NETの院内学級に通うシャーム(14歳)の父の声が響きました。
2022年8月に血液疾患を発症したシャームはシリア南部、ヨルダンとの国境に近いダラアという町から、2020年にここアルビルに避難してきました。
2018年、シャームの父は家族を呼び寄せるためにひとりでアルビルに入り、準備を進めて2020年ようやく妻と4人の子どもをアルビルに呼び寄せることができました。
しかしその直後から、一家に次々と困難が襲います。
アルビルでの滞在許可証を取得するため、弁護士に依頼したところ、パスポートと許可証取得のための代金を持ったまま弁護士は逃亡、警察や治安当局の捜査も及ばず、パスポートも代金も戻ってくることはありませんでした。
周囲の助けもあり、国連機関から一時的な滞在許可が与えられ、現在は許可証を更新しながらここアルビルで生活をしています。
時を同じくして、長女のシャームが頻繁に体調を崩すようになりました。
病院に行くにも経済的に極限状態にあったため、検査を受けることもなく過ごしていましたが、高熱が続いたため今年8月にナナカリ病院を受診、すぐに治療が必要だと診断され治療が始まりました。
現在は治療を受けながら、妹のリンと一緒にJIM-NETの院内学級に通っています。
2011年3月、シリアの混乱が始まった直後から殆ど外出も出来ず、学校にも通えず、長い月日を家の中で過ごしていた2人にとって、院内学級は毎日楽しくて楽しくて、嬉して仕方がないと言います。
またご両親も「お金がなくてアルビルでは学校に通わせてあげられなかった。2人は毎日院内学級であったことを事細かに話してくれるよ。本当に嬉しそうな顔で話しるのを見ると、私たちも嬉しいです」と言いながら、何度も感謝の言葉を伝えてくれました。
院内学級では、教員も子どもたちもクルド語が母語のため、授業はクルド語で行われています。しかしシャームとリンはアラビア語を母語とするため、最初は教員たちも戸惑ったと言います。
現在は教員たちが協力し、2人が理解できるようにアラビア語での通訳の補助を準備しながら授業を進めています。
イラク北部のアルビルにはシリア紛争が始まって以来、多くのシリア人が逃れてきており、UNHCRによると2022年11月現在約13万人のシリア人が難民としてアルビルに滞在しています。
コロナ以降、失業率も高まり経済状況も悪化の一途を辿る中、シャームの父も安定した職にありつくことが出来ていません。
現在は日雇い労働で収入を得ていますが、それさえもなかなか見つからない日々です。
JIM-NETではシャームが治療を続けられるよう、医薬品購入や交通費の支援をしています。
現在実施しているチョコ募金や、日頃からの皆様のご支援のお陰で活動を継続することができていることに、改めて感謝申し上げます。
これからもどうか、子どもたちの治療や院内学級を応援していただけたらと思います。
タグ: シリア難民, JIM-NETハウス