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ヤジディ教徒の記録
今年7月。アメリカ人のビジネスマンでヌールズ財団のバハマンと再会し、ドホークまで足を延ばした。
エレバンはヤジディ教徒で、ドホークで暮らしている。
現在24歳だが、3年前から父の協力を得て、ISから逃れてきたヤジディの女の子たちの面倒を見てきたという。
堕胎手術をひそかに支援したこともある。
お金をバハマンが工面し、支援を続けている。
私たちは、エレバンに案内してもらいドホークの避難民キャンプを訪問した。
レイラはシンジャールで暮らしていたが、2014年8月にISが襲ってきたときに逃げ遅れ、夫は殺され、2人の子どもと一緒にISにシリアのラッカまで連れていかれた。イスラム教徒に改宗したことが認められて、性奴隷として売買されることは免れた。
レバノン系アメリカ人のアブ・ウサマが性奴隷の売買をしていた。
レイラは、アブ・ハニーというレバノン系アメリカ人の妻になった。
義理の妹のアムシャが、サウジのISの戦闘員と暮らしていた。アムシャは40歳を超えていて賢く動き回れるタイプではなかったので、5000ドルを工面して、レイラと一緒に暮らせるようにしてもらった。
兄のハリッドは、そのころ仲介人を介して何とかレイラたちを連れ戻すように動いていた。
一人6500ドルといわれ、レイラと子どもたち2人と義理の妹4人分を工面した。
仲介人はレイラが白いバッグを持って公園で待つように指示した。イスラム国では真っ黒なアバヤをまとい、顔はわからない。しかし、その日は仲介者は現れなかったという。家に帰って電話をすると仲介者は「明日、同じ場所に女性を送るから、合言葉を言うように」と言って合言葉を教えてくれた。
仲介人の女は、彼女らを村に連れていき、一晩その村で暮らして翌日に迎えが来た。
チェックポイントでは、自分たちはシリア人であり、連合軍の空爆から逃れて避難していると説明して通してもらった。
結局はコバニに連れていかれ、PKK(クルドの独立国家を目指す武装組織)の戦闘員に保護され、10日後にイラクに戻ることができた。
レイラの義理の娘のスヘイラは、モスルに連れ去られていた。スヘイラは17歳。3年間モスルにいたが、昨年の7月19日に、モスルが解放されたときに保護された。
スヘイラはナスリーンという、ナディアムラッド(ノーベル平和賞受賞者)のいとこと一緒にモスルで暮らしていたが、米軍の空爆があり、ナスリーンは亡くなった。その時に形見に時計をくれたという。
スヘイラは無事で、その後モスルはイラク軍によって解放され、スヘイラも家族のもとへ戻ることができた。
ハリッドは、もともとジャーナリストだったこともあり、この顛末を本に書いた。
レイラは「自分の話が世界に知れても構わない。ISがおこなった犯罪は決して忘れ去られてはいけないこと。自分が証人になることに誇りを感じる」と語った。
レイラの腕には、ケロイドがあり、亡くなった夫の名前を入れ墨でいれていたが、ISの戦闘員はカミソリで削り、トイレの洗浄液(酸?)をかけたという。
悪夢の傷跡を彼女は世界に発信したいと訴えた。
佐藤真紀