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イラク戦争の15年を語る その④台座
私が初めてイラクを訪問したのは2002年。
バグダッドが一目でわかるランドマークと言えば、フィロドス広場のモスク。そしてサークルの真ん中には、サダムフセイン像が立っていた。
2003年4月9日、バグダッドが陥落すると、米海兵隊が広場にやってきて、サダムフセイン像に駆け上り、星条旗を顔に押し付けた。異様な光景だった。海兵隊員もなんだかばつが悪そうに、星条旗をすぐさま隠すように取り下げた。
その後は、クレーン車がやってきて、サダム像を引き倒すと群衆が殺到してスリッパでサダムの頭をたたき歓喜した。
しかし、実際は、それほど人がいたわけでもなく、明らかに米軍にそそのかされた連中だけしかいなかった。映像ジャーナリストの綿井健陽は、「哀しい制圧です」と現場からレポートした。
その後広場には、米軍の占領に不満を訴える人たちが結集する。
いつの間にか、かつてサダム像があったところには、自由を表現する石膏像が置かれた。
僕は個人的には、この銅像は悪くはないと思ったが、それ程、評価はされず、2012年にバグダッドを訪問した際は、何もなくなってしまっていた。
そして、2018年は台座さえも壊されていたのだ。6年間、未だになにもたっていないというのも不思議な感じがする。音楽家のナシール・シャンマ氏が出資して新しい広場を作るのだそうだ。
ところでクェートには、戦争博物館がある。湾岸戦争が終わってから作られたそうだ。そこには、サダムフセインのコーナーがある。
アメリカ軍からの贈り物として、銅像から切り離したサダムの首が飾られている。
(フィルドス広場のそれではなく、ザウラ・パークにあったものだろう。クウェートでは、サダムは独裁者にして侵略者以外の何物でもないから展示の位置づけも容易だった。
イラクでは、いまだにサダム・フセインを歴史として位置付けることもできずに人々は、思い出したようにつぶやく。「サダムの方がよかった」と。
佐藤真紀