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【難民キャンプからシリアへ帰らざるを得なくなったシリア人】
ここ二ヶ月、イラクのシリア人難民キャンプからシリアに帰ることを余儀なくされたシリア人が急増していると現地スタッフから連絡が入りました。10月以降、イラク・エルビルにあるダラシャクラン難民キャンプだけでも40家族以上のシリア人がシリアに戻ったとのこと。40家族以上が次々にシリアに戻るということは今までになかったことだそうです。
その中の一人、数日後にシリアに戻るというスレイマンさん(31歳)に現地スタッフが話を聞きました。
一体、彼らに何が起こったのでしょうか?
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私の名前はスレイマン。
シリア北東部カミシリ郊外の町の出身です。
25歳の時に紛争から逃れ、ここイラク・エルビルに難民として来て6年が経過しました。
エルビルで同じシリア人と結婚したのだけど、難民である私はエルビル市内で家を借りるが金銭的に難しく、難民キャンプで暮らし始めました。
ここでも何の金銭的な援助は受けれず、テントや生活用品、すべての物を私は自腹で買い揃えたんです。
◆住む家(テント)はいくらで購入したんですか?
ー4600$だよ。
あと生活に必要なものを揃えるのに1000$以上かかったかな。
◆仕事はしているんですか?
ーイラクでは我々シリア人でも仕事をすることが認められいていて、仕事があった私は生活もそう悪くなかったんだよ。紛争下のシリアに比べると生活はよかったよ。
◆どこで働いているのですか?
ーエルビル市内にあるホテルで働いていたよ。
つい先月までね。
でも、ある日オーナーがしばらくこなくていいよ、というので仕事が再開されるのを自宅で待っていたんだ。でも経営状況が厳しくなって給与を支払うことができなくなったとオーナーに言われ、辞めざるを得なくなったんだ。
元々経済がよくなかったクルド自治区では9月25日の人民投票(クルド独立を問う人民投票)後はイラク中央政府からの制裁もあって経済やセキュリティが以前よも不安になって我々にも生活に影響がでてきたんだ。
◆仕事を失ってしまった、だからシリアへ?
ーはい、ここにはもういることができないんです。
◆それはなぜですか?
ーエルビルとシリアでは物価がだいぶ違うんだよ。
◆だいたいどれくらい違うのですか?一ヶ月100$で生活費はカバーできますか?
ーシリアではそのくらいで一ヶ月暮らせるけど、ここエルビルでは300$でも足らないくらいなんだ。
子どもがもし病気になってもここでは十分に治療を受けさせることもできないんだ。
◆キャンプのクリニックで治療してくれるのでは?
ーここにはクリニックはないんだよ。医者が一人だけいるんだけど、小児科の専門ではないので子どもの病気については良く分かっていないようなんだ。そんなところへ連れて行きたいと思うか?必要な薬もなく、ケアも全くしてもらえないんだ。
結局、専門医がいるエルビルの病院に行くことを余儀なくされ、薬も自分で買わなければいけないんだよ。イラクでは基本的に治療費や薬代が無料なのだけど、プライベートの病院に行けばお金もかかるし、病院内の薬も慢性的に不足しているだろう。だから結局自分で買うしかないんだ。
◆エルビル市内までの交通費は自腹ですか?
ー勿論、それだって大変な出費だよ。
◆もしシリアに帰ったらどこに住むんですか?
仕事はあるの?
ー私たちはシリアに家があって、そこに住むよ。修理しなければいけないけれど家を賃貸で借りるよりずっといい。
収入は少ないだろうけど、あると聞いているよ。
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最後にスレイマンさんは
「想像できるかな、仕事と収入がないこの生活を・・・。」
と途方に暮れた目で話していたと言います。
シリアに帰ることを渇望する人もいます。
しかしこのように帰らざるを得ない状況にいる人たちもいるという状況がイラクやヨルダンでは最近では続いています。
選択肢がなく、ただ生きることのために生活を場を変えることはつらいことだという現地スタッフの言葉は考えさせられるものがありました。