現地支援レポート

2017/04/10
シリアにおける化学兵器使用とアメリカの軍事攻撃に関して


 4月4日、シリアで化学兵器が使われた。死者は70人を超え女性や子供も含まれる。
シリア政府とロシアは、反体制の拠点を空爆した際に、貯蔵されていた化学兵器が爆破されたという。
しかし、アメリカは、「アサド政権が化学兵器を用いた確証がある」といい、4月7日には、シリアに巡航ミサイルを打ち込んで大騒ぎになっている。


 個人的には、ロシアの後ろ盾を得て、有利に軍事作戦を進めていた政権側が、この時期に化学兵器を使うことが理解できない。モスルでは、追いつめられたイスラム国が化学兵器を使っているのとまったく状況は異なる。
 2013年に、似たような状況になったが、オバマ政権は、シリア攻撃の決議を議会で得られず、イギリスも首相は、空爆に乗り気だったが結局議会の承認を得られずにシリアへの攻撃はなくなった。その代わりにロシアが仲介し、シリアは化学兵器禁止条約に加盟し98%の化学兵器は破棄された。
今回の事故も、きちんと事実関係を明らかにし、使用した側が責任をとるべきである。
 

 そもそも、アメリカが確証があるからといっているだけで、日本の有識者の方々が、新聞等で「おそらくアメリカは、アサド政権が化学兵器を用いた確証を持っている」と語っているのもおかしな話だ。その有識者の方々が、その証拠をアメリカに見せてもらったのか。
イラク戦争のことを思い起こせば、サダムは、「持ってない」と言い続け、「アメリカは証拠がある」と言って、この時はパウエル国務長官が国連で証拠を提出したが、信用するには足りない情報だったので、多くの国は武力行使に反対していた。結局、アメリカは嘘をついた。
 

 化学兵器使用に関しては、誰が使ったかはいつもよくわからないままだ。
私たちが拠点としている北イラクのハラブジャで、かつて毒ガス兵器が使われた。もちろんサダム・フセイン政権が使用したのは事実だが、毒ガス兵器を使って進行するイラク軍を、今度はイランが毒ガスをぶち込んだりしているから一体どちらが使ったかは未だにうやむやにされているが、アメリカが2003年にイラクを攻撃した際には、「自国民に対して実際に化学兵器を使用した。ほっておくと何をしでかすかわからない」といってイラク攻撃の理由にした。
 トランプは米国の国益しか考えないといって大統領になったわけだが、シリアで誰が毒ガス兵器を使おうが、それがアメリカにどう影響してくるのか。無関心でいていいはずだ。今回の死者が70人だとして、それまでに40万人近くが殺されていることには無関心だったトランプにとって、一線を超えるとはどういうことなのだろう。
今回のアメリカの攻撃では、子ども4名がなくなっているという。アメリカの爆弾で市民が死ぬことには無関心でいられるのか?
 そういう風に考えると、一端ロシアが中心となって、アサド政権が有利なように、和平交渉が動き出したテーブルをひっくり返して、さあ、もう一度ドッグファイトをやろうぜ、という意図なのか。
シリアの反体制派の欲するところだろうし、トランプも、ロシアに思い通りやられては腹が立つ。何人かのシリア難民に聞いてみたが、アメリカの攻撃を歓迎しているのもかなりいる。彼らには、アメリカのミサイルで殺された子どものことなど頭には入ってこない。もうすでに部外者になっている。

 こういった、プロパガンダのために多くの子どもたちが犠牲になっていく。暴力の連鎖を断ち切ることが必要だが、子どもを殺されたら、当然復讐したくなる。しかし、問題は誰が殺したかだ。プロパガンダによって、憎しみと暴力が作られているなら、真実を突き止めることで、憎しみの対象はもっとピンポイントになり、暴力も減少していくことが期待される。


 日本政府は、安倍総理が「極めて非人道的であり、国連決議にも反する。化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないという米国政府の決意を日本政府は支持する。今回の米国の行動は、これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解している」とのコメントを発表している。
今、日本政府がやるべきことは、米国に追随するのではなく、事実関係を明らかにしたうえで、トランプ政権に歯止めをかけるべきところには歯止めをかけるべきだ。トランプ氏もほおっておくと何をしでかすかわからないのだから。

 日本政府が米国のシリア攻撃について「国際法上の根拠」の説明を米国に求める意向だという。安倍晋三首相はトランプ政権の「決意」を支持したが、攻撃の法的根拠はまだ米国から明示されていない。安保理の決議を得ずに米国が単独で行った攻撃であり、日本は仮にも2017年末までは、安保理の非常任理事国である故、責任は重い。

佐藤真紀

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