現地支援レポート

2017/03/21
イラク戦争開戦から14年とJIM-NET


※長文ですが、ぜひ最後までお読みください。

【イラク戦争から14年】

今年の3月20日でイラク戦争が始まり、14年が経ちました。

「イラク戦争のことを忘れないで」と言うよりも、イラク戦争は未だに終わりを見ず、「イラク戦争のこと無視しないで」という方が的を得ていると思います。イラクボディカウントというNGOのHPには、月毎の民間人の死者数を集計しているグラフにしています。

イラク ボディカウント.png

(Iraq Body CountのHPより https://www.iraqbodycount.org/

 昨年10月から始まったISからのモスル解放作戦。

モスル市民たちは、ISに支配されひどい扱いを受け、さらには米軍ら有志連合からの空爆を受けました。民間人の死者は付随的な損傷として、「まあ、しょうがない」扱い。そして今度はISから人間の盾にされ、挟み撃ち。難民として避難してきても、ISの疑いをかけられるという踏んだり蹴ったりの状況です。

 


【モスルから始まったJIM-NET】

 

イラク戦争から14年①.jpg  

JIM-NET立ち上げのきっかけとなった絵

 

イラク戦争から14年➁.jpg

上の絵を描いたラナちゃん

 

JIM-NETが始まったきっかけは、一枚の絵でした。
イラク戦争前に、日本国際ボランティアセンター(JVC)の職員として、バグダッドの病院を視察中に、私は一人の白血病の少女に出会いました。
絵を描いて欲しいと入院している子ども達に頼んだところ、モスルから転送されてきたラナちゃん(12歳)が絵を描いてくれました。自画像と手をつないでいるのは日本の少女。

『日本人と友達になりたい』

その場に鉛筆しかなかったのですが、とても力強い平和のメッセージとなりました。

わたしは、ラナちゃんに約束します。「今度は色鉛筆をプレゼントしてあげるから。」

しかし医者は、「イラクには薬がなく、一年ももたないでしょう」と言います。
「あなたが、薬を持ってきても偽善にしかならない。3年間は治療をしなければいけないのですが、高価な薬をあなたが3年間も持ってこれますか?イラクは石油がある国なんです。医療も進んでいました。経済制裁が終わり、戦争がなくなれば、自分たちで薬は買えるんです。ですので、日本人にしてほしいことは、戦争に反対して欲しいのです。」

私は日本に帰り、ラナちゃんの絵をTVや新聞で紹介して、「戦争をしないで」と訴えました。しかし、2003年3月20日、戦争は始まってしまいました。
後でわかったのですが、ラナちゃんは戦争が始まる前にすでに亡くなっていました。 
戦争が少し落ち着いた時にそのことを知り、遺族に会いにモスルに行きました。 初めてのモスルで、ラナちゃんの家を探し当てると、英語が喋話せるラナちゃんのおばさんに話しかけられ、

「外国人がたくさん病院にやってきて写真ばかり撮っていった。」

「あの時薬があれば、ラナは助かっていたでしょう。」

私は言い訳をしました。「イラク政府は、経済制裁もあり、薬の支援を受け付けていませんでした」
「支援する気は、あったのですか?」
「もちろんです。今は経済制裁もなくなったから、こうやって薬を持ってきました」
「いつ持ってきたというのですか?」
「10日前に、バグダッドに来るときに薬を一緒に持ってきました」
「遅すぎます!」
そんなやり取りをしたのを覚えています。
この時の「遅すぎます!」という言葉は、とても心に残りました。

手遅れにならないように、一人では大したお金が集められないけれども、みんなでやれば、そこそこの支援ができるという確信もあり、JIM-NETというネットワークが立ち上がったのが2004年です。

JIM-NETのサポーターは、"サポーター"と"ラナ・サポーター"の2種類があります。 この"ラナ・サポーター"は、JIM-NETを立ち上げるきっかけになった絵を描いたラナちゃんにちなんでいます。

 

イラク戦争から14年③.jpg

モスル西部から橋を渡って東部に入るところ

イラク戦争から14年④.jpg

病院を訪問した時の写真


 【そして、今、再びモスルに。】
2017年3月12日、モスルのイブンアシール病院からの要請を受け、医薬品を届けることができました。モスルの東岸は、2017年1月半ば頃にほぼ全域が解放されています。

ISが去った後の町には、彼らが壊し火をつけていった傷跡、そして連合軍の激しい空爆で破壊された建物が点在していました。しかし、町中は、一部復興が始まっています。イブンアシール病院も自分たちで、ISが燃やした病院を一生懸命、修理していました。夜明けは来たのかもしれません。

イラク戦争から14年⑤.jpg イラク戦争から14年⑥.jpg

この14年間、我々が成し得たことは何だったのか。また振出しに戻ってやりなおさねばらない。人間とは如何に愚かなのかを見せつけられたようです。

原点に立ち返り、小児がんの支援に専念したいと思います。

是非、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

事務局長・佐藤真紀

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